あかびら人

稲葉未果さん・敦之くん・結菜ちゃん

子どもたちの夢を育む
2300キロの大移住 稲葉未果さん・敦之くん・結菜ちゃん

2017年4月から赤平暮らしをスタートした稲葉さんファミリーは沖縄県からの移住者。ロケットが大好きな長男・敦之くんは、独自のロケット開発で全国的にも知られる市内の企業、植松電機が主催する宇宙教育イベントに参加するのが大のお気に入りです。

子どもたちの夢に少しでも近づけるならと
赤平への移住を決意したんです。

赤平への移住を考えたきっかけは「本当にふとしたこと」だったと稲葉さんは話します。
「沖縄で子どもたちと一緒にテレビを見ていた時に、偶然このまちでロケット開発に取り組んでいる植松電機さんのことを紹介していたんです。こう言っては失礼だけど、田舎の小さな会社が宇宙を目指してチャレンジしてる…。そのことになんだか感動しちゃったんですよね。息子は小さい時からロケットや宇宙が大好きだから、食い入るようにテレビを見つめていました」
そんな様子を眺めているうちに、子どもの夢に少しでも近づける場所があるなら、飛び込んでみてもいいのでは?という気持ちが湧き上がってきたという稲葉さん。インターネットで調べてみると、植松電機がある「赤平市」は移住者を募集していて、福利厚生や子育て支援が充実していることも知りました。
「母子家庭の私たちにとっては、そういう支援制度も大変魅力的。移住へ向けて大きく気持ちが動きました」

子どもたちと共に沖縄から2000km以上離れた、赤平に移住した稲葉未果さん。

市職員の皆さんのサポートを受けて
「おためし暮らし」で住まいと仕事を確保。

稲葉さんの出身は静岡県ですが、学生時代を北海道で過ごしました。だから、北海道へ移住することに抵抗はなかったと言います。
「大学卒業後に沖縄に渡って、それから16年間。結婚して、二人の子どもが生まれて、離婚をして(苦笑)。長く暮らしていたので、沖縄には愛着がありますし、ママ友もたくさんいます。それでも北海道に来ることが、子どもたちにきっといい影響を与えてくれる気がしたんです」
移住するなら、新しい環境に溶け込みやすいタイミングがいいと考え、娘の結菜ちゃんが小学生になる2017年4月から赤平で新生活を始めようと決意。その前の2月に一度、「おためし暮らし制度」を利用して赤平を訪れ、住む場所と仕事を確保しました。市職員の皆さんが親身になって相談にのってくれたのがありがたかったと振り返ります。
「今は赤平の市営住宅に住んでいます。スーパーやコンビニ、郵便局も近くにあり、生活には困りません。駅までは歩いて30分。すぐそばにバス停もあるので、大きな病院やショッピングセンターがある街にも気軽に出かけられます。車がなくてもそれほど不便は感じていません。赤平市は北海道のほぼ真ん中にあるので、札幌や旭川、新千歳空港、観光地の富良野など、いろんな場所にアクセスしやすいところも魅力だと思っています」
稲葉さんが就職したのは赤平市内にある光生舎というクリーニング会社。工場で働き、洗濯品へのタグ付けやたたみ作業に携わっています。
「一緒に働いているスタッフは良い方ばかりですし、同じ小学校に通う子どもを持つママ友もできました。学校が同じなので気になることはすぐに相談できて助かっています」

キラキラとした笑顔が素敵な長女の結菜ちゃん。

目を見張る子どもたちの急成長。
友だちもでき、元気に育ってくれています。

北海道で暮らした経験があると言っても、当時は学生。子どもを連れて移住することには不安もあったそう。
「私自身は大丈夫だとしても、子どもたちが新しい環境に馴染めるかどうかは心配でした。ふたりとも生まれてずっと沖縄育ちなので、寒さに耐えられるかどうかも気がかりで…。ただ、これまで赤平で過ごしてみて、結果的には良いことのほうが多かったです。学校の先生たちも『転校生をあたたかく迎えよう』と他の子どもたちに伝えていてくれたようで、転校初日から、近所の子どもと一緒に登校することができました。友達もたくさんできて、今は毎日のように一緒に遊んでいます」
敦之くんは沖縄にいたころ、どちらかと言えば引っ込み思案で自分から人前に出るタイプではありませんでした。ところが赤平の小学校に通うようになってから、クラスの委員をやったり、授業で積極的に発表したり、稲葉さんが「100倍ぐらい成長が早くなったみたい!」と感じるほど、何事にも前向きに取り組むようになったと言います。
「子どもたちが通っている赤間小学校は児童数が少なく、週に数回〝たてわり清掃〟を実施しています。他の学年の子どもたちとたくさん交流できることも、良い影響を与えているのかもしれません。心配していた冬の寒さも何とか1シーズン乗り切ることができ、この土地で暮らす自信もついたようです」
敦之くんが憧れていた植松電機では毎月一回「コズミックカレッジ」という宇宙をテーマにした教育イベントを開催していて、敦之くんも結菜ちゃんも参加するのを楽しみにしています。モデルロケット教室やスペースブローブコンテスト(※)など、宇宙を身近に感じられるイベントが開催され、「いろいろな刺激を受けやすい環境なのが魅力」と稲葉さんは話します。

※手作りの探査機を小型ロケットで打ち上げ上空で放出、各自定めた技術課題を競うコンテスト

植松電機の宇宙イベントに参加するのが大好きという敦之くん。

北海道ならではの文化や産業にも触れて
自分の進む道を見つけてほしいです。

「移住の決め手にもなった子育て支援の充実ぶりも、ありがたい限りです。高校卒業までの医療費が無料だったり、市外に通学する際は交通費の支援があったり。特に私たちのような母子家庭には小・中・高校の入学時に支度金が助成されるのは大変助かります」
移住のきっかけは敦之くんの「憧れ」でしたが、将来子どもたちがどのような道を選ぶかは「まだこれから」と稲葉さん。
「宇宙やロケットに関わる仕事を目指すのもいいし、赤平に移住したことで農業や酪農など、北海道ならではの産業に興味を覚えるかもしれません。親としては沖縄で育ったアイデンティティというか、平和を願う気持ちも大切にしてほしいですね。子どもたちには、とにかくいろんなことに興味を持ってほしいと思っています。 最近娘は料理や写真にすごく興味があるみたい。北海道の自然の雄大さと赤平の人たちの優しさに触れながら、この街でのびのびと育ってくれることを願っています」

赤平ぐらしを満喫していると話してくれた稲葉さんと子どもたち。

稲葉未果さん・敦之くん・結菜ちゃん

【2019年03月29日更新】